「われ思う、ゆえに我あり」
哲学に詳しくない人でもこの言葉は聞いたことがあるかもしれません。
近代哲学の祖であるフランスの哲学者、ルネ・デカルトが残した言葉です。
あらゆるものを疑って疑って疑いまくった結果、唯一残ったもの。
それが疑っているこの「私」でした。
デカルトは、「私」という主体を、全ての哲学の出発点に据えました。
要は、哲学の第一原理です。
迷ったら、ここに立ち返ればよい。すべてがここから始まる。それが第一原理。
なんでいきなりこんな言葉から記事を始めるのか?
それはヨットの第一原理について考えるためです。
まあぶっちゃけそんなんあってもなくてもいいんですけど、いろいろブログとか書いてて誤解されてしまっては元も子もないので。誤解されないためにもこの記事を残しておきます。
ゆーても、カッコつけたいだけですが(笑)。
前回の記事で、Quantumのガイドを紹介していきます!といいました。
その前に一つだけこの記事を挟んでおきたい。
いろんなヨットに関する知識に触れるときに、これだけは頭に入れておいてほしい、というのが僕が言うヨットの「第一原理」です。
結論を先取りすればそれはすなわち、
「速いか、速くないか」
です。
それだけです。
ヨット、とくに僕が記事を書いているスナイプって、速い人でもみんないろんなことを言いますよね。
それこそ前回の記事のトピックだったピンアップだ、ダウンだとか。いろいろ。
諸説が氾濫していますよね。
軽風のランニングって結局アンヒールとフラットとヒールどれが速いんでしたっけ??
クローズってフラットと微ヒールどっちが速いんでしたっけ?
とかもろもろ。
人によって違います、といってしまえば終わりだけど、ほんとにみんな言うことが違う。
僕が記事にしていることも、その諸説の一部にすぎません。
これにはいろんな原因があると思うんですが、二つか三つくらいに原因を大別できる気がしています。
一つ目は、ビルダーやマストやセールやら、みんなちょっとずつ違うことが多いという点です。年式によってビルダーが同じでも形が違ったり、そもそもマストの長さが違ったり、いろいろ細かな違いがあります。
そうすると当たり前に、こっちの船ではよかったのに、あっちでは遅いとか、そんなことがあり得ます。
これが諸説を生む一つ目の原因。
二つ目は、走るための要素が多いこと。
例えば、今日はフラットで走った方が良かったねとか言った時に、そもそも同じ日に同じ海面で走っていても、違う船に乗ってるし、体重も違うし、セールの引き具合もハンドリングの仕方も違うし、違うことが多すぎるし、風ももしかしたらちょっと違うかもしれない。
ってなると、片方に当てはまることがもう一方に当てはまらないこともある。
スピードをつくる要素が多いがために、難しくなっている部分があります。
全部が全部そうじゃないけど、実際同じコンディションなのに違う走り方をしていて、しかも同じくらいのスピードで走ってるということも、ありえる世界です。
これが二つ目。
三つ目は、スピードが大して変わらないこと。
二つ目と被るとこもありますが、スナイプはあんまり艇速差が出ないといわれてます(まじで速い場合は速い)。となると、ぶっちゃけ100点のセーリングじゃなくて95点くらいのセーリングしてても、なんか勝てたりしちゃうんです、それが「間違っていても」。
理論的に間違っていて、ざこいパフォーマンスであったとしても、大して差が生まれないのであれば、それを修正しようという気にはならないでしょう。慣れてる方でいいやって。
これが三つ目。
ということで、速い人が言ってることにもばらつきが出るわけです。
もちろん一致している部分もあるけれど、いろんな人がいろんなことを言う。
この記事を読んでくれている人も、きっと何か情報を得ようと思ってくれているでしょう。
ただ、重要なのは、合わなかったら捨てるということ。
上に書いた三つの理由で、僕が言ってることは、あなたにはマッチしないかもしれない。
もちろん、万人に当てはまることもあります(例えば、ヒールつけたらウェザーかかるとか)。
ただそうでない部分に関しては、自分たちで判断する必要があると個人的には思っています。
ではどうやって判断するのか?
速い人たちから得た情報を使うかどうかをどうやって判断すればいいのか?
その基準になるのが、第一原理です。
試してみて速ければ採用すればいい。遅ければやらない。
満足するまでマネして、それでも遅ければ、そんなものは続ける必要がありません。
どんな権威が言ったことであろうと、やる意味がない。
一番良くないのは、速いのか遅いのかわかってないのに、とりあえずやってること。
初めはそれでいいんだけど、すぐに頭打ちになる。
僕の所感では、二年目くらいからは、自分で試した結果、船が速くなったのか遅くなったのか、それを意識することが大事なんじゃないでしょうか。
極論すれば、理論的にどんだけ間違っていてもどうでもいいわけです。
クローズを20度のアンヒールで走っていても、速ければそれが正解です。
それが第一原理が意味することです。
意味がわからなくても、なんで速いのか説明できなくても、速いやつが勝つのがヨットレースですからね。
ただ、さっきもいいましたが、誰がやっても同じ結果になるものもある。
ラフしたけりゃヒールさせた方がいいですよね、たぶん絶対。
だからそこは守破離なわけです。守るとこは守らないといけません。それが固まれば、型を破ることができる。
破って離れるためには、速いか遅いか? それがわかる必要があります。
僕のブログで<基礎>とか書いてるのは、守に属していると考えてもらってよいです。
つまり万人にある程度当てはまる。
それ以外は、人によって違うこともある。
だから自分で試して選ぶ必要がある。わからなかったらとりあえずやる。
ブログなり本なりで情報を得ることも大事。だけどそれ以上に大事なのは、それを試してその結果、速くなったかどうか? それをわかったかどうか? じゃないのでしょうか。
練習で大事なのは、巷で言われてる「正しい」技術をこなすことではなく、考えることでもなく、試して、結果的に速いのか遅いのか、わかること。
これをスピード感覚といってしまってもいいけど、「感覚」という言葉を出すとすぐに生まれつきのセンスみたいな話になって、とっつきにくくなる。
動作練習やらスタート練習やらはするけど、スピード感覚を養う練習なんてないですよね。(笑)
ただ、もしも、速いのか遅いのかわかったら一瞬でうまくなれる気がしませんか?
ある程度の実力を持ったクルーがスキッパーに転向しても速いのは、それがわかっているからだと、個人的には思います。
スピード感覚という言葉に逃げず、何をしたら速いのか遅いのかわかるようになるのか?
この問題に真剣に向き合ってもいいのでは、と思います。
少なくとも、今まで考えられていなかった問題だからこそ、生まれつきとか、センスとか、経験でしか身につかないとか、そういった言葉で片付けられていたからこそ、真剣に取り組んだら面白い問題だと思っています。
ということで、このブログに書いてあることも、自分たちで取捨選択して自由に利用してくれればうれしいです。
わからんかったらいつでも連絡してください。僕でよければいつでも相談に乗ります。
ということで、雑感になってしまいましたが、次の記事からは、サンディエゴの「正解」を紹介していきたいと思います~