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もと京大スナイプリーダーが技術・チーム作りを発信

感覚と知識と言語化②

前回の記事では、知識についてばっかり書いてしまいました。

 

知識で差が出ることもありますと言いました。ただそんなレベルで、インカレの勝敗を決するような技術力の差は生まれません。

 

スピードがあればメインを引き込むという知識があっても、自分が速いか遅いか感じ取れなかったら、いつ引き込んだらいいのか知ることはできません。

 

ある程度の感覚がなければ、インカレで必要とされる技術力に達することはできないと、個人的には思っています。

 

でも、この感覚っていったいなんなんでしょうか。感覚と聞くと、個人差があって、生まれつきの能力で、鍛えるのが難しい、そんなイメージがあるかもしれません。それを否定するつもりもありません。やはり、生まれつきセンスがいいというか、感覚の鋭い選手はいるものです。

 

ただ、ことインカレというか、学生レベルに限って言えば、生まれつきの感覚がないと前を走れないなんてことにはならないです。要するに、持って生まれた「感覚の鋭さ」の差をどうやって埋めるか、どうやって短期間でより多くのことを感じれるようになるか、が大事になってきます。

 

先天的な能力を言い訳にするのは個人的に非常に気に食わないですし、このブログの趣旨にも反します笑 

この記事は、自分のセンスのなさを言い訳にしていたり、感覚ってどうやったら研ぎ澄まされるんやろって悩んでる人、そんな人たちに向けて書きます。

 

 

 

 

ヨットにおける感覚

ヨットにおいて、重要であろう感覚には何があるでしょうか。

 

一番すぐ浮かぶのは、「スピード感覚」。これがないと、十分な艇速は出すことができませんね。ハンドリングなんて船のスピードによって変わるはずなのに、そのスピードがわからんかったら、正しいハンドリングなんてできるわけがないです。

 

他には、どんな感覚があるでしょうか。例えば、スタートラインを見る能力。自分がスタートラインまであと何艇身なのか、見通しを使わずに言い当てるは思っているよりも難しいです。そして、スタートにおいてめちゃくちゃ大事な感覚です。

 

他にも、リフトヘダーを感じるとか、セールのパワーを感じるとか、ここぞのパンピングタイミングを感じるとか、ヨットにはほんとにたくさんの感覚があります。

 

ここで、全て挙げきることはできませんし、多くを列挙することに意味はありません。

とにかく数え切れないくらい多くの感覚が、その選手の動きを作っているのです。

 

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ただ走ってるだけでどれだけの感覚を使ってるんだろう

 

それでは、数えきれんくらいの感覚をどうやったら身につけれるのでしょうか。まずは、知識との関係を見てみます。

 

感覚と知識

たとえば、ヨットを始めたばかりの1年生はヘルムがわかりません。ただなんとなく、だけどしっかりと強く舵を握る。まっすぐ走らせようとして、ヘルムなんかお構いなしに舵を使います。

 

そこで、先輩から、「ヘルムは大事や、もっとヘルムを感じろ」と怒られて、わからないなりに感じようとするわけです。そうすると次第に、これがウェザーかとかわかるようになってきます。そうこうしてる間に、この船はウェザー弱いなあとか言い始めるわけです。

 

極端な話ですが、ヘルムというものを知らなかったら、こんなことにはならないと僕は思います。ヘルムは、感じ取る対象になりえません。たしかに、その手で感じているにも関わらずです。

 

今、僕はパソコンのキーボードをたたいていて、確かにキーボードの表面を感じていますが、それを感じているとは思っていません。ただ、この表面の感触が世界で一番の質でほんとに滑らかで人類史上最高の品質やと言われたら(そんなことはあり得ませんが笑)、急にその表面の感触を意識し始めます。要はその知識を知った瞬間から、キーボードを感じ始めるわけです。

 

感覚にはそういう面があると思います。

 

要は、世界一の品質という知識(さっきの例なら、ヘルムが大事という先輩からの知識)を知って初めて、今感じているもの(キーボートとかヘルム)が、感じるべき対象に変わるのです。何言ってんだって感じですね笑

 

ぐだぐだ書きましたが、知識がないと、感じれるもんも感じれないってことが言いたいわけです。

 

同じことを言いますが、だからこそ、知識は大事です。

普段の練習で適当にやりすごしていること、それは、実はトップセーラーがシビアに感覚を研ぎ澄ましていることかもしれませんよ。

 

感じれないのではなくて、感じる対象になっていないだけかもしれませんよ。

 

これが生まれつきのセンスによるものだ、なんて誰が言えるのでしょうか。

 

 

ほんとに感じようとしてる?

上では、感じる対象をまず知るということを書きました。

例えば、クローズで波が前から来た時、それをヘルムから感じ取ったことはありますか?

もしなかったらそ今まで感じる対象でなかったもんが、今この瞬間に感じる対象になった、ということです。

 

それはいいとして、感じる対象があったとして、みんなどれくらいそれをシビアに感じようとしているでしょうか。

 

スタートの微速前進のスピードが感じ取れないんですよって人はたくさんいます。

だからスタート練習したいんですよ~って人もたくさんいます。

 

じゃ実際にどうやったら微速前進を感じれるのかってことについて、ほんとに突き詰めて考えている人はあんまりいないです。たぶん。僕の感覚的にですが笑

 

感じれている人がいても、「いやああいつは感覚が鋭いからなあ」とか、「やっぱセンスがちげえわ」とか言って片づけてないですか?

 

上手い人がどうそれを感じているか聞いてみたことはありますか?

上手い人がどこを見ながら微速前進を作っているか観察したことはありますか?

上手い人が、どうやって座っているか、考えてみたことはありますか?

 

感じるべきものを感じれないのは仕方がないことです。ただ、漠然と乗っていてもそれを感じれるようになんてなりません。

 

「感じたい」という強い思いをもって初めて、上に書いたような具体的なアクションが出てきます。得た情報が今度は知識となって、自分が感じる上でのヒントになっていくわけです。

 

そこらへんにヒントはたくさん転がっています。感じれない理由、少なくとも現状にずっと甘んじている理由は特に見当たらないわけです。

 

見える化

そんで、感じるためには、感じたいというパッションとそこから派生する具体的なアクションのほかにどんなことができるのでしょうか。

 

ここでは、見える化ということで、感覚に頼らない方法を書きます。

 

もう大体察しはついていると思いますが、例えばマーキング。

感覚的にロープを引くんじゃなくて、マーキングに基づいてロープを引けば、ミリ単位で正確なトリムができます。そんなとこは感覚に頼らなくてもいいわけですし、何なら、速いと「感じた」セッティングをマーキングを使うことで正確に再現できるわけです。

 

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いつかのマーキング

 

他にも、スタートラインの見通し。

感覚的にラインまでの距離がわからなくても、見通しが見えれば、正確にラインを把握できます。いつも見えるとは限りませんが、見えれば、感覚なんかよりもはるかに正確です。

 

こういった類のことはほかにもたくさんあると思います。

 

スタートラインが見えないと加速できないと思っていませんか?

そんな人はぜひこの記事を読んでみてください。感覚に頼らない方法は考えていないか探していないだけで、いくらでもあるはずです。

 

 

www.zkst-kuyc.work

 

 

感覚は大事ですが、感覚に頼るべきものが多いと、それが狂ったときに修正するのが難しいです。ほんとに大事なところに感覚を取っておいて、それ以外で補えるところは補っていった方が余程賢いと僕は思います。

 

こんなんセンスとかまじで関係ないです。

 

まとめ

この記事では、

ヨットの感覚ってなんなんってとこから始まって、感覚と知識の関係、感じるべき対象がわかってないとそもそも始まらないって話、感覚は大事やけど実は感覚に頼らなくてもいけちゃう部分もたくさんあるんだよってことを書きました。

 

このシリーズの最後は、知識と感覚の橋渡しをする言語化について書きたいと思います。