歴史的快挙を成し遂げた東工大ヨット部の記事の続きです!
前回の記事から少し時間が空いてしまいました、、。ごめんなさい。
簡単にここまでの話をおさらいしておくと、
・近年、右肩上がりで成長してきた
・練習時間に徹底的にこだわった
という点です。
今回の記事では、近年の東工大の躍進に違う角度から迫ってみたいと思います。そして、そこから何を学ぶことができるのか?僕なりにかみ砕いていきます。
当たり前を疑い、しかし、当たり前のことを徹底するのが大事なのでは?という当たり前の結論までお付き合いいください。笑
ミーティングは?
「ヨット部」の活動において、ミーティングは練習・レースに続いて重要な要素でしょう。コロナ禍以降、zoomなどのオンライン会議システムを使ったミーティングも増えていることと思います。
ミーティングの質が、チームの実力向上に大きな影響を与えているのは間違いがありません。クルーとスキッパーで分けてミーティングしたり、下級生と上級生でやってみたり、ペアでやってみたり、動画をみんなでみてみたり、、いろんな方法があると思います。では、コロナ禍というイレギュラーな状況下で東工大はどんなミーティングをしていたのでしょうか?
海上ミーティング
前回の記事では、東工大が練習時間に徹底的にこだわり抜いたという話をしました。練習時間を確保するための取り組みを紹介しましたが、その中に「ミーティングを海上でする」という話がちょろっとでてきました。海上でミーティングをするとは、技術的なミーティングを海上で終わらせるということです。
では、陸では何も話し合わなかったのかといういうとそんなこともないんですが、、、陸では、技術的な話ではなく、事務的な事柄を共有するだけで終わっていたようです。例年は、陸でクルースキッパーの技術的なミーティングをしていたようです。
では、なぜ従来の形を変更して、このようなミーティング形式をとったのでしょうか?
要因①練習時間の確保
前回の記事と同じことですが、大事なのでもう一度書きます。練習時間を確保するためです。コロナの影響によって、合宿が禁止され通いでの練習を余儀なくされた状況下で、いかに練習時間を確保するか?そして、その練習時間をいかに質の高いものにするか?どうやったら、次の日また練習に行こうと思えるか?
それを可能にする一つの答えが、ミーティングを沖で済ますということだったのでしょう。
ヨット競技においてミーティングは大事であるという前提(僕だけですかね笑)に囚われずに、自分たちが最も大切にする価値観(練習時間)を貫いたということ。これは、一見あたりまえかもしれないけど、並み大抵のことではないと思います。
海外に出かけると、普段自分たちが当たり前と思っている前提に気づくことはたくさんあります。でも、自分たちが無意識のうちにやっていることに、その世界の外へでることなしに気づくこと。そしてそれに変更を加えること。これは意外と難しいのではないでしょうか。
要因②自チームの特徴
練習時間を確保するためにーティング形式を変えたということの裏には、もう一つ特筆すべき点があります。それは、彼らが、自分たちのことつまり自チームの特徴(カラーといってもいいかもしれません)をしっかりと把握していた、ということです。
ミーティングをみんなでやることには、もちろんたくさんメリットがあります。自分より実力のある人に質問することもできますし、対話の中から思いがけない発見をするかもしれませんし、後輩を教えることもできます。
ただ、もしも、後輩の人数が少なく、ある程度レースメンバーが固まっていて、かつそれぞれが確固たる自我をもっていた場合はどうでしょうか?各々が、それぞれに技術を上げていくということに重きを置いていたらどうでしょうか?先に挙げた「全員で」するミーティングの意義は多少薄れてしまうかもしれませんね。
また、夜帰ってからそれぞれの家からzoomでミーティングをしたり、遅い時間までハーバーに残ってミーティングすることは、練習時間を大切にするチームにとっては、マイナスです。次の日の練習時間の確保が難しくなるだけでなく、疲労もたまり、その質にも影響を与えます。小松さんの言うように、練習量が質と量で決まるのなら、量を確保して質が落ちてしまったら意味がありません。
この状況を的確に把握して、従来のスタイルに変更を加えたこと。これは僕がいうのもあれですが、すばらしいことだと思います。
もちろん、技術的な課題は、ミーティングの「外」で個人的に解決したりもしていたようです(これも、今年度の東工大の特徴をよく把握していたからこそ可能になったことのように見えます)。
コーチングは?
東工大は、コーチングを受けていたのか?これは誰もが気になるところです。
結論から言えば、イエスです。
回数は年に10回あるかないか程度。春インの前と、秋インの前にそれぞれ5回程度、外部コーチの方に来てもらってコーチングを受けていたようです(名前は伏せさせていただきますが、日本でも有数のトップセーラーの方のようです)。
コーチングの内容について詳しく書くことはできませんが、理論的なことと、感覚的なことをうまくつなげるようなコーチングもされていたようで、とても学ぶことが多く、質の高いコーチングを受けていたように感じます。
ただ、それでも年に10回程度。常駐しているわけではありません。
今回のインタビューだけで判断するのは早計ですが、現役選手の努力も相当なものだったのでしょう。
取り組みに共通するものとは何か?
ここまで、大きく三点についてみてきました。
それでは、これらに共通することはあるのか?
僕なりにその共通点をまとめると、
・当たり前のことを疑うこと
・当たり前のことを徹底すること
・自分たちのことを分析できていること
です。
当たり前を疑うこと
まず初めに当たり前を疑うこと。
そもそも今の練習時間のままでいいのか?もっと伸ばせるところはないのか?今のミーティングの仕組みは最適なものなのか?
かれらがこのようなプロセスを踏んだかどうかはわかりませんが、結果として、いわゆる前提のようなものが変更されていることがわかります。上でも書きましたが、これは非常に難しい。それを形あるものとして行動に移したということから学ぶことは多いです。
当たり前を徹底すること
二つ目に当たり前を徹底すること。
練習時間を確保するとか練習量が大事とかってすごく当たり前です。ただ、じゃあたとえば、KAZIの小松さんの記事を読んで、練習時間を増やそう!!!と思ってそれを実行に移し結果としてちゃんと練習量を増やしたというチームがどれくらいいたのでしょうか?
思うに、ヨット(それ以外も)においては、当たり前のことがとても大事です。にも拘わらず、練習時間以外でも、「フラットで走る」とかみんなが知っている当たり前のことをできている人・チームはとても少ないのではないのでしょうか。
今回は練習時間を確保するということでしたが、それをちゃんと行動に移したこと、システムにまで昇華したこと、そしてそれを世代を超えて徹底したということは、一見すると簡単なようで、実行するのはむずかしいことなのです。
自分たちのことを分析できているということ
そして三つ目。
上の二つを可能にしたものとして、自分たちのことをよく知っていたということが挙げられると思います。
そもそもどんなミーティング手法や練習方法についても、それを実行する人たちの特徴ぬきに、良い悪いの判断を下すことはできません。初心者がやる練習とジュニアからやっている選手がやる練習は違ってしかるべきですし、フォーカスする点は異なるでしょう。それは、人数やメンバーの性格によっても違って当然だと思います。
みなさんは自分たちのことをどれくらい知っていますか?そして、今やっている取り組みは、どれくらい自分たちのチームにマッチしていますか?
まとめ
一世を風靡した東工大へのインタビューということで、その要因についてみてきました。
自分たちが自明としている前提を疑うこと。
当たり前のことを徹底できているかを疑うこと。
自分たちのことを知ること。
そして、それに合わせて、最適な方法を模索していくこと。
そんなことを考えさせられました。前々から言っていますが、10のチームがあれば、10のチームスタイルがあります。あるチームでうまくいったことが別のチームでうまくいくとは限りません。大事なのは、多くの情報の中から、自分たちにあったものを取捨選択し、自分たちなりの形で吸収することです。
そしてそれを可能にするヒントは、彼らの活動の中に見出せます。二度目の緊急事態宣言が発令され、イレギュラーな状況が続く中、チームをどう舵取りをしていったらいいのか。従来の考えに囚われないことが、今まで以上に求められているのではないでしょうか。
最後にお世話になった人への謝辞を記します。
まずは、インタビューを快く引き受けてくださった東工大の前主将とスナイプリーダーありがとうございました!!!
そして、インタビューをセッティングしてくれましたお二方も感謝いたします。本当にありがとうございました!
そしてそして、東工大とzoomで話すという僕のツイートを見て飛び入り参加してくれた中部スナイパー(大学名伏せます)もありがとうございました。いろいろな質問をしてくれて、座談会が大いに盛り上がりました。